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IP BASEコラムの内容(その1)

 先日、特許庁が主催するスタートアップ支援事業である、IP BASEにて、当社代表がIP BASE AWARD奨励賞を受賞いたしました。受賞後に、IP BASE登録メンバの方向けにコラム(メルマガ)を書かせていただきました。

 大切な内容ですので、当ブログでもコラムの内容をご紹介いたします。

知財とは花見の場所取りである

 近年、スタートアップは、大企業と競合関係となる事例が増えています。それに伴い、事業を守る知的財産(特許)の重要性も高まっています。スタートアップは、知的財産の「特許の数」の面では大企業には残念ながら勝てません。だからこそ、「特許の質」が重要なのです。

〇「特許の質」を高めるために、必要なこと

「特許の質」を高めるために、心がけていただきたいことがあります。それは、「特許が取得できる技術」を見つけるのではなく、「特許を取得すべき技術」を見つけることです。実は、「特許を取得したい技術」を見つけることなく、特許を取得しているスタートアップが多いのです。
 特許というのは、スタートアップの皆様が思っているよりも取得すること自体は容易だったりします。そのため、開発中の技術を弁理士に説明し、「どこか特許が取れるポイントありますか?」と聞くと、「このポイントは特許取得できる可能性がありそうです」とか「伺った話からこちらでポイントをまとめて書類を作成します」と返ってくるわけです。このようなプロセスでは、「特許の質」を高められるはずがありません。

〇「特許の質」とは、花見の場所取りと同じ
 ここで、「特許の質」とはどのようなものなのか、(私の考えを)説明いたします。
ズバリ!「特許の質」とは、「権利を取る場所」「権利の広さ」の2つを意味します。
しっくりこない方は、花見の場所取りを思い浮かべてください。花見の場所取りを依頼されたあなたは、どのように場所取りをしますか? きっと、綺麗な桜が咲きそうな“場所”に、なるべく“広く“ブルーシートを広げるのではないでしょうか。綺麗な桜が咲きそうな”場所“を確保することで、競合がその場所で桜を見ることができなくなります。また、”広く“場所を確保することで、競合は綺麗な桜で花見をすることが難しくなります。すなわち、とるべき”場所“に”広く“ブルーシートを広げることで、競合に対して優位に立つことができるのです。
 一方で、だれも注目しない桜の下にブルーシートを広げても意味がありません。また、どんなに良い桜の下でも小さなブルーシートでは、すぐ隣に別のグループがブルーシートを広げ、同じ桜の下で花見ができてしまします。これが本当に花見であれば、仲良く花見をしましょうとなるのですが、「花見=ビジネス」である場合は、そうはいきません。だからこそ、ビジネスを優位に進めるため、「特許の質」を高める必要があるのです。

〇桜の木の見つけ方(権利を取る場所)
 先ほども述べましたが、特許の質を高めるためにすべきことは、「特許を取得すべき技術」を見つけることです。花見の場所取りを再び例にしますと、特許を取得すべき技術を見つけるとは、公園の多くの桜の木のうち、どの桜の木が綺麗な花を咲かせるのか、を見極めることです。多くの花見客は、少しでも綺麗な花を咲かせる桜の木に集まってきます。綺麗な花を咲かせる桜というのは、「ビジネス上重要な独自技術・ビジネスモデル」に相当します。具体例としては、ビジネスモデル・使い勝手(UX)・独自製法・独自成分・独自機能、といったものが挙げられます。これらの中から、自社で独占することでビジネスを優位に進められる要素に対して、特許を取得するべきなのです。これが、権利を取得すべき技術の見つけ方です。決して、どの桜の木の下でもよいからブルーシートを広げれば良いというものではありません。

〇ブルーシートの広げ方(権利の広さ)
 花見の場所を見つけたら、次はブルーシートを広げる必要があります。ブルーシートを広げるためには、以下の3つを考える必要があります。どんなに良い場所でも、下記を考慮した結果、別の場所に移るという選択肢もあり得ます。
1. ブルーシートを置いていい場所なのか(特許取得可能なアイデアか)
2. 他人のブルーシートが先に置かれていないのか(他人が先に特許取得していないか)
3. どの程度の大きさのブルーシートを広げることができるのか(広い権利範囲が取得できるか)
 これらの判断をしていくのが、実に難しいのです。1.を判断するためには、特許法の知識や過去の特許化されたアイデアの類型を知っている必要があります。2.を判断するためには、他社の特許を調査する必要があります。3.を判断するためには、過去の技術との相違点を(言葉で)明確したうえで判断する必要があります。ご理解の通り、一朝一夕では習得することが難しく、相当数の特許に触れた経験が必要となります。
 このように、弁理士に依頼する前に検討することが多くあるのです。そして、この検討を経ることで、「特許の質」を高めることができます。

 次回は、(特許の質を高める)花見の達人である知財専門家についてご紹介いたします。(リンク

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