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知財のオープンクローズ戦略

 知財デューデリジェンス等で、スタートアップ企業に知財戦略について尋ねるとこのような回答が多く得られます。

スタートアップA「特許を出すと、情報をオープンにすることになるから特許を出さないことも考えている」

スタートアップB「当社の知財戦略は、主要な技術を特許出願して情報をオープンにするが、ノウハウに関する情報は特許出願せずにクローズとする」

スタートアップC「当社の知財戦略は、多くの人に公開して利用してもらう部分と、特許出願により当社だけが実施する部分とを分ける」

 上記の知財戦略は間違ってはいません。しかしながら、知財に絡む事業のオープンクローズ戦略と情報のオープンクローズ戦略とがごっちゃになっている印象があります。例えば上記のスタートアップA、Bは情報のオープンクローズ戦略の話をしており、スタートアップCは事業のオープンクローズ戦略の話をしています。知財戦略を立案するにあたっては、事業・情報のオープンクローズ戦略を分けて考えた方が分かりやすくなります。

事業のオープンクローズ戦略とは

 事業のオープンクローズ戦略とは、下記のような戦略を指します。

事業のオープン戦略:技術情報や仕様を広く公開し多くの企業が参入できるようにし、全体の市場を拡大させる(協調領域)

事業のクローズ戦略:自社の技術的な強みを独占または秘匿化することにより、自社の市場シェアを拡大させる(競争領域)

 つまり、事業のオープン戦略とは技術の標準化等を図り、積極的に当該技術の市場を拡大することにあります。昨今では、通信技術を中心に標準必須特許と言われるものやトヨタ自動車のように特許技術を無償開放する等の動きも出てきましたが、「知財による独占」とは本来は相反する考え方となります。

 一方で、事業のクローズ戦略の最も分かりやすい例が、特許権によって自社の技術を独占し、他社との差別化を図るというものです。もしくは、特許権の取得では保護が十分ではない(他社が実施していても証明できない)技術等を秘匿化することにより他社の模倣を防ぐという戦略になります。

情報のオープンクローズ戦略とは

 他方で情報のオープンクローズ戦略は、事業のクローズ戦略の具体的な手段であり、自社の強みである技術をどのように独占し他社と差別化するのかを選択する戦略となります。

オープン戦略:自社技術を特許出願して情報を公開する。その一方で、特許権として保護し、積極的に他社を排除することで技術を独占し、市場での競争力をつける。

クローズ戦略:自社技術について、情報を秘匿化し、非公開のノウハウとすることで他社の模倣を防止する。

 このように、特許とするのか、ノウハウとして秘匿化するのかを選択することが重要になります。もちろん、どちらを選択するにしろメリットやデメリットがあります。

情報のオープン戦略(特許で保護)

(メリット)特許権という公的な権利として、技術を独占することができる

(デメリット)特許不成立時や侵害立証容易でない技術の場合、競合に技術情報が使われる

情報のクローズ戦略(ノウハウ化)

(メリット)技術情報が公開されないため、競合に技術情報が使われない

(デメリット)他社が自社開発した場合やリバースエンジニアリングされた場合は技術を独占することができない。

 このように、特許で保護した場合と、秘匿化してノウハウ化した場合とではメリットデメリットが真逆になります。

特許は結局出した方がいいの?

 特許で保護することの、デメリットは競合に技術情報が特許出願により、知られてしまうことにあります。つまり、特許出願の公報を見て初めて他社が理解できるような技術については、ノウハウ化を検討すべきです。一方で、SaaSに代表されるようなWEBサービスのうち、UIやUXを向上させる技術やビジネスの根幹となるビジネスモデルについては、他社が見ればすぐに理解できるため隠すことによるメリットは殆どないと考えています。逆に、特許出願をしていない場合は、類似の機能を競合がリリースしても法的に止める権利が無くなってしまいます。

 そのため、競合がすぐに理解できる技術について「特許出願をしない」、という選択肢は“ない”ということになります。特にビジネスモデルは後発企業に模倣され、資本力で負けるということもありますので、特許で他社が簡単に参入できない状況を作りだす必要があります。

 個人的には、ノウハウとして秘匿化することを検討するよりも、どのように特許権で保護するのかを考えた方がいいと考えています。参考情報ですが、ノウハウ化が成功した例として、コカ・コーラの成分やケンタッキーのスパイスの成分の話がよく挙げられます。う~ん、何となくこれらの例を聞いてもノウハウ化は時代に合わないですよね。

知財のオープンクローズ戦略の立て方

 これらをまとめると、知財のオープンクローズ戦略の立て方というのは、

1.事業のオープンクローズ戦略をたてる

2.事業のクローズの部分に対して、情報のオープンクローズ戦略をたてる

という流れになるかと思います。

 このようなことを考えながら、企業の知的財産部というのは知財戦略を立てているわけです。知財戦略は知財の専門家と相談しながら、立案していくことをお勧めしております。弊社は企業の知的財産部での経験豊かな代表弁理士が、知財戦略の立案だけでなく、実行まで貴社の知的財産部となって行わせて頂きます。

 貴社の知財戦略の立案・実行のお手伝いを是非一緒にさせてください。

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