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知財デューデリジェンス

スタートアップの知財デューデリジェンス(知財価値評価)

 スタートアップ企業が資金調達を行おうとする場合、ベンチャーキャピタリストや機関投資家による「デューデリジェンス」が行われます。このデューデリジェンスの結果は、企業価値や出資額の決定等に大きく影響します。そのため、スタートアップ企業は日ごろからデューデリジェンスの評価項目に対して、検討し準備をしておく必要があります。

 デューデリジェンスでは、さまざまな視点から、対象企業について詳細に調査が行われます。項目としては、大きく分けて下記の4つが行われることが多いようです。

  1. 人事デューデリジェンス
  2. 技術(ビジネス)デューデリジェンス
  3. 法務デューデリジェンス
  4. 財務(税務)デューデリジェンス

 上記のほかにも、〇〇Techと呼ばれる技術系の企業の場合は、知的財産デューデリジェンス(知財DD)も行われます。この知財デューデリジェンスは弁理士だけでなく、企業の知的財産部所属していた知財の専門家が行っているようです。実際に知財デューデリジェンスというのは、特許出願書類を作成することを生業としている弁理士よりも、企業の知的財産部で知財戦略の立案や知財部組織の運営を経験した人の方が適任と個人的には感じています。

 知財デューデリジェンスの大きな目的は、2つです。1つ目は、知財に関するリスクの調査です。そして、2つ目は保有知財の価値評価です。

 これらを目的に、企業の規模やフェーズ、そして投資家のニーズに合わせて様々な調査を行います。「あなたの知財部」にて依頼を受けた場合は、主に下記のような確認/評価を行っています。

  1. 知財マネジメント体制の確認/評価
  2. 知財戦略の確認/評価
  3. 職務発明規定の確認/評価
  4. ライセンス・紛争状況の確認/評価
  5. 保有知的財産権のまとめ
  6. (保有知的財産権と実施技術・使用商標との対比)
  7. (競合他社との知財状況との比較)
  8. (実施技術のFTO(Freedom To Operate)調査:他社権利の非侵害の確認))

 「あなたの知財部」では、1~5の項目については、基本的に実施し、6~8については必要に応じて実施するという形としています。それぞれの項目について、私がどのような視点で知財デューデリジェンスを行っているのか簡単に解説します。

1.知財マネジメント体制の確認/評価

 スタートアップ企業においては、知的財産の専任の担当者という方は基本的にはいらっしゃいません。知財業務多くは、法務担当が兼任しており、特許事務所とのパイプ役となっています。そのため、知財マネジメント体制の確認としては、外部の知財専門家を登用しているか、特許事務所との連絡体制、期限管理体制等をヒアリングしていくことになります。また、アイデアやロゴがどのように出願要否が判断され、出願に至るかを確認しています。

2.知財戦略の確認/評価

 知財戦略と言葉で表すと、とても難しく感じられます。知財デューデリジェンスでは、実際の知財戦略の善し悪しというのは判断をしていません。イメージとしては、知財について行き当たりばったりではなく、統一した基準で対応できるか否かを確認しています。また、知財戦略というと“出願戦略”は多くの企業で立てている印象です。その多くが、事業のコアとなる技術については出願し、ノウハウとなるところについては出願せずに秘匿化するというものです。しかし、“出願後”の戦略について立案している企業はとても少ないです。実は、出願後にも、分割出願の戦略や審査請求のタイミング、出願公開のタイミング、知財をIRに使用する戦略、早期審査の活用有無、外国出願の戦略、同業他社の動向に合わせた戦略等々、多くのことを検討していく必要があります。そのため、知財戦略をヒアリングさせて頂く際に、合わせて出願後の戦略についても今後の検討事項となることを対象となる企業の経営陣にお話しすることを心がけています。

3.職務発明規定・譲渡契約の確認/評価

 職務発明規定の確認を行っているのは、出願した特許の真の権利者を確認するためです。職務発明規定がない場合は、特許を受ける権利は発明者に原始帰属します。そのような状況で、発明者と企業が契約により特許を受ける権利の譲渡が行われていない場合は、企業の保有する特許権が無効となるおそれがあります。知財デューデリジェンスでは、職務発明規定(権利譲渡の事実)を確認することは非常に重要となってきます。また、相当の利益についての定めも確認します。こちらは、今後、発明者と企業との間での相当の利益についての争いが発生するリスクについて確認するためです。

4.ライセンス・紛争状況の確認/評価

 ライセンスの状況確認というのは、例えばライセンスを受けて事業をしている場合には、その契約内容について確認をしています。例えば一方的に、ライセンサーがライセンスを打ち切りにできたりする場合は、課題があると判断します。紛争状況の確認は、実際に知財が問題となり裁判となっている案件の有無だけでなく、警告や勧誘の状況についても確認しています。将来的に事業を行う障害となるか確認するためです。

5.保有知的財産権のまとめ

 保有している、特許権・商標権・意匠権について確認します。実際に取得している知財権が事業を保護しているのかの確認は必要であれば実施します。また、特許権については簡単に技術の内容をまとめて投資家が分かりやすい形の資料を作成することもあります。

知的財産権の金銭的価値の評価

 上記のように知財デューデリジェンスを行っています。一方で、当社が知財デューデリジェンスを行う場合は、知財の金銭的価値の評価というものは基本的には実施していません。知財の価値を金銭的に計算する方法はいくつか提案されているのですが、個人的にはどの数字を出しても説得力がないと感じているからです。また、知的財産権の独占権は、事業を進める上でその事業を有利に進めてくれるものです。すなわち、今後の潜在的な市場で飛躍するためのカンフル剤でしかなく、事業とともに知的財産権の価値が変わってくると考えているからです。(ご依頼をいただいた場合には、金銭的な価値についても評価をさせて頂きます。)

 いかがでしょうか?上記の評価項目を見ると、明細書の作成技術というのはあまり関係がないことがお分かりになるかと思います。そのため、企業の知的財産部の経験者の方が評価者に向いていると考えています。

弊社代表は企業の知的財産部の経験が豊富な弁理士です

 知財デューデリジェンスは、明細書を書くスキルよりも、企業の知的財産部の経験が必要です。弊社代表は企業の知的財産部の経験が豊富かつ知財の専門家である弁理士の資格を保有しています。投資家からの知財デューデリジェンスのご依頼だけでなく、知財デューデリジェンスを受けるスタートアップ側の準備もお引き受けいたします。どうぞ、お気軽にお問合せください。

費用の目安

〇知財デューデリジェンス:50~300万円(規模や難易度による)

〇知財デューデリジェンスに向けた企業内体制作り:顧問契約の中で対応させて頂きます

知財デューデリジェンスの参考サイト

IPBASE(特許庁のスタートアップ支援サイト)

特許庁HP(知財デューデリジェンス標準手順書)

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