名古屋の弁理士がスタートアップ・ベンチャーの知財戦略を解説第６回（HR Tech 新卒採用）

　地元名古屋でスタートアップの機運を高めようと、奮闘している弁理士の佐藤です。スタートアップの創業者の方とお話していると、皆さん知的財産についてよく勉強されており、その効果や怖さみたいなものは理解されている方が多いです。

　しかし、実際に「知財を使ってどのようにビジネスを上手く進めるのか」という点についてはアイデアをお持ちでないことが多いように思います。もちろん、ビジネスの方向やビジネスの種類によって知財の関り方は大きく異なり、一概にどのように知財を活用すればビジネスが有利になるかということを語ることは出来ません。

　そこで、これまでに成功しているスタートアップ・ベンチャー企業の知財戦略を公開情報から読み解くことで類似の業態の知財戦略に触れていただくべく、この弁理士による知財戦略を解説シリーズを始めてみたいと思います。今回は第6回目です。

　第１回から第５回までは、FinTechやクラウドソーシング系の企業を紹介してきました。第６回からは話題となっているHR Tech系の企業について数回にわたり知財戦略を紹介していきたいと思います。

　HR Tech企業の選定にあたりましては、HR Note様のHR Techのまとめ記事（リンク）を参考にさせて頂いております。

HR Tech企業（新卒採用）

　6回目にご紹介するのは、HR Note様の記事（リンク）で採用管理にカテゴライズされ、新卒採用のためのプラットフォームを提供している企業とさせていただきました。

　このようにまとめてみると、HR Tech企業の特許出願件数の少なさが目につきます。特許出願されている内容は、「企業の採用を支援するために求職者のマッチング度や志望度を予測する技術」や「採用の進捗を管理する技術」に関するものでした。これらの技術は新卒採用に限らず、採用を支援する技術として重要であり特許出願をして自社の技術を保護していると言えます。一方で特許出願していない企業については、サーバー内の処理であり他社の侵害を指摘しづらいことを考慮して出願を控えている可能性もないわけではありません。しかしながら、後述する理由により、あえて出願していないという可能性は低そうです。

　商標を見てみると、特許とは異なり多くの企業で何らかの出願または商標権を保有しています。しかしながら、自社のサービス名について商標権（出願を含む）を保有している企業は僅か２社しかありませんでした。そして、その２社というのは特許出願も実施している知財意識の高い企業です。この商標の出願状況を見ると、特許出願をしていない企業が戦略的にノウハウを隠すために特許出願をしていない、というわけではないと予測します。

HR Tech企業の知財戦略

　これまで同様に知財戦略を予測しようと調査したところ、このように自社のサービス名の商標権も取得せず、開発した技術について特許権もない、このような状況のHR Tech企業がかなりありました。技術やブランドを守るためには、自らが動く（特許庁に出願する）必要があります。今後の事業拡大を見据えてしっかりと知財の専門家と戦略について相談するべきだと考えます。

　今回はHR Tech企業の新卒採用のプラットフォームを提供している企業について知財状況（戦略までは読み取れなかった）をご紹介しましたが、引き続き別の領域のHR Tech企業の知財状況もまとめてHR Tech企業の知財戦略を紐解いていきたいと考えています。

※上記は公開情報を用いた個人的な推測であり、掲載企業の実際の知財戦略とかけ離れている場合がございます。また、同一社名や分割出願等により紹介企業の実際の保有権利状況と異なる場合がございます。