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スタートアップ・ベンチャーの特許事務所の選び方

スタートアップ・ベンチャー企業の特許事務所の選び方

 スタートアップ・ベンチャー企業の経営者から特許出願や商標出願をする際に、特許事務所の選定について相談を受けることがあります。

経営者「どの特許事務所に依頼したらいいですか?」

私「コミュニケーション能力が高く、担当者の顔が見える事務所を選ぶことをお勧めします。」

 私は、いつもこのように回答しています。クレームの構成に関する知見や、知財戦略を立案等々大切なことは他にもたくさんあるのですが、特許事務所を選定する基準はコミュニケーションが取れるということが最も大切なのです。

 例えば、特許事務所は定型のカバーレターを使って書類のやり取りをするスタイルを好みます。文面は、

~文例~

【拒絶理由通知受領のご連絡】

 貴社の出願された特願○○について、このたび特許庁より拒絶理由通知が発行されました。つきましては、〇月〇日までに貴社のご意向をご連絡ください。(法定期限は〇月〇日です)

~文例~

 さて、このような書面を見てどのようにお感じになりますか?

 Aさん「ん?どうゆうこと?」

 Bさん「私の発明は特許にならないのか。。。残念だが仕方ない。」

 Cさん「まぁ、そんなもんだよね。引例確認して補正・意見書で対応するかな」

 多くの方はAさんやBさんのようにお感じになるのではないかと思います。Cさんのように捉えるのは、企業の知財部にお勤めの方や発明を多く出願している方だけでしょう。

 特許事務所は知財の専門家ですから、Cさんのような思考でこの書面を送っています。しかし、多くの経営者はそのように受け取りません。それは特許事務所がクライアントのことを考えず、自身の業務スタイルを貫いているからです。実際に経営者の方から何が書いてあるか分からない書類が特許事務所から来たと相談を受けることがあります。

コミュニケーションが取れる事務所

 コミュニケーションが取れる事務所であれば、このような書面と同時に担当者が経緯や対応について口頭で連絡してくれるか、別の平易な書面を作成してくれるため、経営者は次の対応をしっかりと考えることが出来ます。逆に、クライアント目線に立つことができず、書面を送るだけの事務所はスタートアップ・ベンチャー企業で知財担当者がいない場合は避ける方が無難であると思います。

受け身の特許事務所に注意

 また、知財担当者がいるスタートアップ・ベンチャー企業の場合は、特許事務所と連携して知財戦略の立案や自社出願のブッシュアップを検討することがあります。具体的には、他社の特許情報や事業情報を収集し、自社出願の請求項の見直しを検討します。このような時に必要となるのもコミュニケーション能力です。例えば、他社情報を特許事務所担当者にインプットしようとしても、

事務所「それって明細書作成に何か関係ありますか?」

事務所「ふーん、それで?具体的には?」

といった目先の業務だけを優先する態度や、古くからの先生然とした態度をとる受け身の特許事務所は避けた方がいいでしょう。このような特許事務所は、大企業の案件を多く担当していることが多く、指示されたことを指示された通りに省力で対応することを最重視しているからです。そのため、時間がかかることや、積極的な提案というものは望めません。

 スタートアップ・ベンチャー企業の特許出願はその1件1件がビジネスの成否を左右することも多く、クオリティアップのために最善を尽くすべきであるため、このような特許事務所とは温度差が大きく、うまくいきません。

 一方で、大手特許事務所でも、スタートアップ・ベンチャーのために最善を尽くすという弁理士もいます。そのような弁理士と知り合いになったら、依頼を継続的に実施したり、日頃からビジネスに関する情報をインプットしておくとよいでしょう。とても貴重な存在なため、顧問契約という選択肢もよいと思います。

特許事務所の選定も知財部の仕事

 実際には、そのような良い特許事務所を選ぶというのはなかなか難しいものです。まずは知財関係者から話を聞いてみてください。そして、実際に会ってみて・話してみてコミュニケーションレベルを把握してから依頼なさると良いかと思います。もしくは、当社のように知財部機能を提供している企業に選定を依頼するのも一つの方法です。コミュニケーションが取れる事務所の選定や、業界・方針に合わせた戦略を策定し特許事務所と企業とのコミュニケーションをより円滑にいたします。

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