スタートアップ・ベンチャーのビジネスモデル特許
株式会社Makuakeやfreee株式会社等のスタートアップ企業の上場が加速しています。スタートアップ企業の多くは、大企業のように多くの技術や製品を取り扱うのではなく、一点突破型でワンアイデアをベースに事業を展開しています。例えば、株式会社Makuakeはクラウドファンディングという新しい資金調達の仕組みを提供し、freee株式会社は日々の帳簿付けをクラウド上で提供しています。
このようにスタートアップ企業は一点突破型のビジネスであるが故に、技術を独占することが出来る特許の重要性は高くなります。
3Dデータから部品を製造するビジネスモデル
さて、東海地方は製造業が盛んです。製造業では、図面を作成し、図面に基づいて部品を加工することが出来る企業を探し、複数社から見積もりを取得し、比較して発注する、という工程が一般的です。
この製造業の仕組みを変えるかもしれないビジネスモデルが注目を集めています。そのビジネスモデルとは、「製品(部品)の3Dデータをクラウド上にアップロードすることで、見積もり額が算出され、発注が行える」というものです。実際に製造現場では、どんな部品でも3Dデータを作成しています。そして、形状に関しては図面ではなく、3Dデータを正として、加工を行っていたりします。そのため、3Dデータをアップロードするだけで部品の製作や試作ができるというのは理に叶った手法だと感じます。
大企業とスタートアップとが似たビジネスモデルで事業を実施
このように、3Dデータを用いたオンライン部品製造を行っているスタートアップとして注目されているのが、CADDi株式会社(https://corp.caddi.jp/)です。そして、CADDi株式会社は、自身のビジネスモデルについて特許権を取得しています(プレスリリース)。一点突破型スタートアップとして、このように特許を取得しているというのは大変大きな強みとなります。
CADDi株式会社取得特許:特許第6462945(リンク)
それでは、この3Dデータを用いたオンライン部品製造依頼というビジネスはCADDi株式会社以外は行うことができないのでしょうか?
特許を取得しているんだから、「第三者は同じビジネスは実施できない」に決まっている。そう思われる方も多いかと思います。
実は、3Dデータを用いたオンライン製造を行っている会社は実は別にもあります。例えば、株式会社ミスミもサービス名「meviy」という名称で、3Dデータを用いたオンライン製造を行っています(https://meviy.misumi-ec.com/)。
CADDi株式会社が特許を持っているのに、なんで別の会社が似たビジネスモデルで事業を行うことができるのか、疑問に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?そして、さらに混乱させるかもしれませんが、株式会社ミスミも「meviy」に関する特許を取得しています(プレスリリース)。もちろん、このCADDi株式会社の特許と、株式会社ミスミの特許はともに、特許庁が審査したうえで登録した有効な権利です。
株式会社ミスミ取得特許: 特許第5753621号(リンク)
特許で守られている部分
このように、似たビジネスモデルであっても有効な複数の特許が存在することは珍しくはありません。そのため、特許を1件取得したからといって同業他社の類似のビジネスモデルでの参入を完全に防げるとは限りません。また、似たようなビジネスをしているからと言って、特許技術を模倣したというわけではないことが多々あります。
時に大企業が、特許出願されたスタートアップ企業のビジネスモデルを真似ているという批判がなされることがありますが、ビジネスモデルのうち、特許で守られているのがどの部分なのかをしっかりと把握することが必要です。
CADDi特許(出願日:2017年12月)の概要:
3Dデータから、加工業者を複数抽出し、各加工業者の見積もり額を予想し、提示価格を決定する。
ミスミ特許(出願日:2014年10月)の概要
3Dデータから、見積もり額を算出後、製造条件の変更があった場合は、見積もり額等に反映する。
このように、両社の特許の内容を見ると、「3Dデータで部品製造」という特許ではないことが分かります。両社ともに、自身のビジネスモデルに沿った発明を取得していることが分かります。また、出願日を見ると、CADDi株式会社の特許の方が、株式会社ミスミの特許よりも後で出願されていることが分かります。CADDi株式会社は、株式会社ミスミの特許を回避しつつ、独自のビジネスモデルで事業を展開していると考えられます。
貴社のビジネスモデルの特許化を一緒に考えます
「あなたの知財部」代表の佐藤は、Nextユニコーン企業として日経新聞掲載に掲載されたスタートアップ企業において、知財顧問に就任するとともに、知財機能の立ち上げを法務担当とともに行った経験もあります。貴社のビジネスモデルが特許になるか、似たビジネスモデル特許を回避して自社のビジネスモデルを特許化したい等、貴社のビジネスモデルの特許化を一緒に検討させて頂きます。
どうぞ、お気軽にお問合せください。