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特許(出願前)調査は知財専門家に頼もう

 スタートアップ企業や中小企業は大企業と異なり、特許出願件数も年間数件と多くはありません。そのため、1件1件の特許出願にもっと注力すべきだと考えます。しかしながら、出願する前段階である、自身の開発している技術やサービスのどこが発明になるか理解することもできていないのが実情です。そして、そのような状態のまま特許事務所の弁理士に自身の開発している技術やサービスの内容について1時間程度説明すると、

「あとはお任せください」

とばかりに、特許出願の書類が後日納品されてきます。そして、

「おぉ、自分の開発技術は特許の書類だとこんな表現になるのか。すごいなぁ(読んでも良く分からないけど)」と、感心し、特許事務所に出願を依頼する。

 まさにこれ!と思った方は、この記事を機会に出願の流れを考えなおして頂きたいと思います。なぜなら、このような流れでは良い特許を取ることは出来ませんし、そもそも出願しても特許になる可能性が不明なまま費用を支払うことになります。なぜなら、特許調査を行っていないからです。

特許調査の目的

 特許調査する目的は大きくわけて3種類あります。

1.(出願前調査)出願をしようとしているアイデアと似たものがないか調査する

2.(動向調査)他社を含めて開発技術の動向(トレンド)を調査する

3.(侵害予防調査)自社の技術が他社の特許を侵害していないか調査する

 このうち、自身のアイデアの権利範囲を決めるために実施するのは、1.の出願前調査です。自分では画期的!と思っていても過去に同じようなアイデアがある場合には、権利範囲が狭くなったり、最悪特許権の取得ができなかったりと、出願にかかる費用が無駄になります。また、範囲が極端に狭い権利しか取得できない場合は、出願の要否を判断する必要があります。

 このように、出願前調査を行うことで取得可能な権利範囲を事前に予測し、出願費用を削減することが出来ます。つまり、特許調査を行わずに自身の開発している技術やサービスのどの部分が発明になるのか理解することは出来ないのです。 

権利の明確化

 出願前調査を行うメリットは、取得可能な権利範囲を予測することだけではありません。事前に似たような技術を知っておくことにより、アイデアを明確にすることが可能となります。

 特許権を取得するためには、特許庁の審査官から特許査定を得る必要があります。特許査定とは、特許庁の審査官が過去に出願されて特許を調査し、過去の出願との差異が明確である場合になされます。逆に、過去の出願との差異が不明確である場合、審査官は拒絶(特許許可できませんよという通知)を行います。

 この際、実際には異なる技術であっても差異が不明確であると、何となく似ていると判断され、拒絶されることがあります。拒絶された場合は、一定の制約の中で差異を明確化する「補正」と呼ばれる手続きを行います。この「補正」には制約があり、本当は異なる技術なのに、出願の内容からはその差異が明確にできないという場合、特許を取得することができなくなってしまいます。

 一方で、最初から過去に出願された技術を知っている場合はどうでしょう?出願時に、似た技術との差異を明確にしておくことが可能です。その結果、特許を取得できるのはもちろん、特許庁から拒絶を受けにくくなるため、「補正」を行う必要がなくなります。また、不要な「補正」を行わないことにより、「補正」にかかる費用も削減することができます。

出願前調査のメリット

POINT

1.取得可能な権利範囲が予測可能(出願要否の判断)

2.発明の差別化が可能(補正範囲の確保&補正回数の削減)

出願前調査は知財の専門家が行うのが最適

 それでは、誰が出願前調査を行うのが良いのでしょうか?出願前調査の実施者は以下のパターンが考えられます。

 ・発明者が自分で行う

 ・調査を外部に依頼する

 発明者は自分の発明を最も理解しているのですが、調査により似た技術が見つかると自分のアイデアを”否定”されたような気持ちになるため、出来たら似た技術が「見つからない」ことを願いながら調査を行うことが多いです(開発者時代の実体験です)。つまり、発明者の特許調査は、自身のアイデアが新しいことを証明することに重きが置かれ、似た技術を”見つけない”調査になってしまいがちです。また、特許調査に関するスキルがなく、調査漏れが多く発生してしまうこともあり、おススメしません。

 では、調査を外部に依頼する場合はどうでしょう?発明者と異なり、似た技術を見つけても”否定”された気持ちにはなりませんし、特許調査のスキルもあります。しかし、ここで特許調査を行う目的を思い出してください。特許調査を行う目的は、「権利範囲を予測し、発明の差別化を行う」、ことです。これらを行うためには、特許調査スキルだけでなく、知財の専門知識や経験が必要となります。特許調査会社は、元技術者をサーチャーとして雇用していますが、彼らの多くは元技術者であって知財の知識や経験があるわけではありません。そのため、特許調査報告書には調査対象となった技術と近しい技術が列挙されているのみです。肝心の権利範囲の予測(出願要否の判断)や発明の差別化については、触れられていません。よって、調査報告書を受け取った後に自身で、権利範囲の予測や発明の差別化を行う必要があります。一方で、知財の専門家が出願前調査を行う場合は、似た技術の調査だけでなく、権利範囲の予測や発明の差別化まで一気通貫して行うことが可能となります。

知財リテラシーの高い企業はどうしているのか

 ここで、冒頭の特許事務所とのアイデア相談に話を戻します。1時間の打ち合わせで可能なのは、発明のポイントを理解することのみです。しかも、発明のポイントを相談者が明確に提示してくれることが前提です。スタートアップや中小企業の案件は、まずは技術背景を理解するところから始まりますので、2時間程度は本来必要になります。そして、発明を理解した後に、「出願前調査」を実施し、権利範囲の予測や差別化を行うことが必要です。つまり、1時間程度の打ち合わせで、「あとは任せて」、という流れでは良い権利を取得することは困難です。

 実は知財リテラシーが高く、社内に知的財産担当がいる企業では、知的財産担当がアイデア発掘を行い、出願前調査も実施しています。そして、予測される権利範囲と費用対効果を天秤にかけ、出願要否を判断しています。出願要と判断した場合は、出願前調査で見つけた似た技術との差異を明確にしたうえで、特許事務所に特許出願書類の作成を依頼しているのです。知財リテラシーの高い企業は、このようなフローを採用することで、特許出願の質を高め、必要な権利を取得することでビジネスを拡大させています。逆に考えれば、このようなフローを採用しないと、特許権を取得しても自分のビジネスを守れないということを知っているのです。そのため、専門性の高い人材が必要であり、知的財産部や知的財産の担当者を採用しています。

 しかし、タートアップ企業や中小企業の多くは、知財の専門家を社内に抱えるほど知財関連の業務がない場合がほとんどです。もしくは、社内の知財担当者がいるものの経験が浅く専門家の助言が必要な場合も多くあります。

 そのような場合は、ぜひ「あなたの知財部」にご相談ください。知財経験豊富かつ弁理士資格を保有する担当者が貴社(あなた)の知財部として知財業務を行います。出願前調査を有効活用し、貴社の貴重なアイデアを最大限活かしましょう。

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