BLOG

伝えたいこと
そのままに。

  1. HOME
  2. ブログ
  3. 知財情報
  4. 「ナカイの窓」が「断捨離」という商標使用でトラブルという記事を弁理士が解説

「ナカイの窓」が「断捨離」という商標使用でトラブルという記事を弁理士が解説

 テレビ番組の「ナカイの窓」が登録商標である「断捨離」を使用したことで商標権者とトラブルになって、そのことが番組終了に影響したとする記事が出ています(出典:NEWSポストセブン

 記事によりますと、同番組内では人気コーナーとして「断捨離の窓」を放送しており、これが「断捨離」という登録商標を侵害していると提訴されているそうです。

商標権の効力は独占権と排他権

 記事では、商標権の効力は使用権と禁止権と記載されていますが、独占権と排他権の方が一般的な使われ方だと思います。

 独占権とは、名前の通り登録商標の使用を独占する権利です。すなわち、登録商標の使用をしている他人を排除することが出来ます。また排他権とは、重複した権利が発生することを防止することが出来る権利です。

 ※独占権:使用を独占する権利、排他権:他人を排除する権利という解釈もあります。

 どちらにしろ、登録商標は商標権者が独占して使用することが出来、他人が使用している場合は差止請求や損害賠償請求を行うことが可能となります。

商標権は商標と指定商品とのセットで考える

 商標権というのは、商標(マークやネーミング)と指定商品とのセットで考える必要があります。例えば、「AEON」という文字を見て何を思い浮かべますか?

 ある人はスーパーやモールを展開する「AEON(イオン)」、そして別の人は英会話学校の「AEON(イーオン)」を思い浮かべるのではないでしょうか?

 もちろん上記2社はそれぞれに商標権を保有しています。では、上記2社が互いに商標権を侵害しているのかと言えばそんなことはありません。これは、スーパーの「AEON(イオン)」の商標権と英会話学校の「AEON(イーオン)」の商標権とでは指定商品が重複していないからであると言えます。

「断捨離」の指定商品は?

 「断捨離」については、同じ権利者から複数の出願がなされています(商標登録第4787094, 5412928, 5582468, 5909022, 5948115, 商願2016-092139)。最初の出願は2003年になされており、その後断捨離という言葉の社会への浸透に合わせ指定商品を増やすために出願を追加ということをしており、権利意識が高い出願人であると言えます。

 「断捨離」については、多くの指定商品がありますが、今回のTV番組に関するものですと、商標登録第4787094号の区分41、「放送番組の制作」あたりが問題となっているのではないかと予測します。

 ※余談ですが、本当に多くの指定商品で「断捨離」は権利取得されています。おもちゃ、ビール、台所用品、金融関連も。

番組のコーナー名は商標的使用に該当するのか

 一般的に、書籍のタイトルやCDのタイトル等には商標権は及ばないとされています。少し専門的になりますが、これらのタイトルはその商品の内容を示すもので出所を表示するものではないとされているからです。

 例を挙げますと、誰かが「吾輩は猫である」という商標権を、指定商品「書籍」で保有していたとしても、出版社は「吾輩は猫である」という題名の本を出版することが出来ます。

 今回の場合は、番組のコーナー名として「断捨離」を含む「断捨離の窓」を使用していました。このコーナー名としての使用が番組のコーナーの内容を示すものであり、特定の内容を認識させる場合は商標権侵害は成立しないと裁判所は判断すると考えられます。一方で、同コーナーは人気コーナーであり、複数回にわたり放送がされているようです。そのため、タイトルが番組の内容を示しているのではなく、出所表示機能・自他商品識別機能といった商標権の機能を発揮していると裁判所が判断した場合商標権侵害が成立する可能性もあります。いずれにしても、最終的に商標権侵害となるか否かは裁判所の判断を待つ必要があります。

タイトルとしての使用でも商標調査をすべき

 結論としては、タイトルとしての使用であれば一般的には商標権侵害は成立しないとされていますが、トラブルを避けるため、商標調査をしておくことをお勧めします。

商標調査は専門家に依頼ください

 商標調査を行うと、「えっこんなのが登録されているの?」ですとか、自分の使いたい商品が他人の登録商標の指定商品の範囲に含まれているのかといった専門的な判断が必要になります。ご自身で判断されると思いがけないトラブルに巻き込まれることがございます。商標調査は専門家に依頼いただいた方が確実です。

 当社は、商標調査についても顧問契約・都度契約の中で対応させて頂きます。お気軽に「あなたの知財部」にお問合せください。

関連記事